Storm -ただ "あなた" のもとへ-
「どうしたんだ?」
ストーブの火で、白い肌がほんのりとオレンジに染まり、綺麗だと思った。
赤い唇がかすかに震えてから、動いた。
「恨んでいるか?」
炎を見つめたまま、こちらを見ようともしなかった。
「はあ?」
雰囲気にそぐわない間抜けな言葉がでる。
「なんだって?
ああ、まあ、離婚されたことは恨んでいるかもな」
涼がふざけたのに、綺樹は少しにらんだ。
「おまえは相変わらず、訳わからないな。
そんなこと言いに来たのか?」
歯をぐっとかみしめる表情になってから、睨みあげた。
「悪かったな。
そうだよ」
冗談で言った涼は面食らった。
「おまえ、意外とバカだな」
「なんだよ、それ」
「コーヒー入れる。
インスタントだけど、文句言うなよ」
調理場から借りた小さな鍋に水を入れると、ストーブの上にかけた。