Storm -ただ "あなた" のもとへ-
「大変だな。
ウルゴイティの当主も。
アメリカまでパーティーか」
「いや。
ダバリードの仕事を再開したんだ」
涼の手が止まった。
「ダバリード?」
「ああ。
ウルゴイティがシステム化されたら、ダバリードの仕事もするという条件が、ウルゴイティとダバリードの間で交わされていたらしい」
“恨む”が杞憂だったのがわかったのか、綺樹の表情が柔らかくなっていた。
「ん」
「ありがとう」
差し出されたコーヒーカップを受け取ろうとして、ファーが肩から滑り落ちた。
涼は屈みこんで拾い上げ、肩にかけてやろうとする。
魅入られたというのか。
吸い寄せられるように、首の付け根にくちびるを寄せた。
ゆっくりと押しつける。
数秒してから少し離し、綺樹を斜めに見上げた。