Storm -ただ "あなた" のもとへ-
「水しかでない。
かぜをひくからやめとけ」
綺樹は天井に顔をあげて英語で毒図いた。
アメリカにいると、それなりにアメリカ人臭くなるらしい。
涼はおかしくてくつくつと笑った。
「気持ち悪いならお湯をわかすから、それで体を拭くか?」
ん?と問うような微笑を向ける。
「いや。
気持ち悪いわけじゃないから、いい」
綺樹は視線を外して、ふいっと横を向いた。
綺樹の気持ちがなんとなくわかる。
シャワーを浴びないと切り替わらない。
体に相手のくちびるや指の感触が残ったまま、それに引きずられる。
作ったサンドイッチを一切れだけ食べた後、一向に食の進まない綺樹を涼は手を止めて眺めた。
「ちゃんと食えよ。
鳥ガラみたいのは抱きがいがないんだから」
綺樹は片眉を上げた。