Storm -ただ "あなた" のもとへ-
「そういうこと言う?
普通」
「言う。
食ってさっさと帰れよ」
綺樹が無表情になって、黙り込んだ。
「どうした?」
「なにが?」
涼はため息をついた。
なんで問い返すかね。
「ここは寒いから。
風邪ひくぞ」
「ああ。
うん」
綺樹は眼差しを伏せて、もう一切れつまんだ。
誤解は解けたらしかった。
ちらりと涼を見上げる。
「まだ、起きるのには早いんじゃないの?
仕事、夜からだろ?」
「目が覚めた。
車、どこかに待たせているのか?」
寝るのが惜しくて、眺めていたとは言わない。
「うん?
ああ、大通りに」
「家に着いたら、あったかい風呂にしっかりつかれよ」
綺樹の顔色が青白かった。
くちびるの色も。
かなり寒いのだろう。
駄目だ。
これ以上ここにいたら。
涼は立ち上がった。