Storm -ただ "あなた" のもとへ-
2.それぞれの始まり



ひらり。

また、ひらり。

舞い落ちる。

その真下に立ち、見上げていた。

幾重にも重なった花びらの向こうに、薄い青い空が見える。

何度かこの桜が咲いた季節をこの屋敷で過ごしていた。

なのに、こうやってじっくりと見つめるのは初めてだった。

綺樹(あやな)がまだ偽装の妻だった時、愛人の元から久々に戻った際に、言ってたな。


“散り始めたよ。

日本語で、幽玄の世界って言うの?

ああいうことを言うんだな。

明日の朝、見てみたら?“
< 4 / 448 >

この作品をシェア

pagetop