Storm -ただ "あなた" のもとへ-
2.それぞれの始まり
*
ひらり。
また、ひらり。
舞い落ちる。
その真下に立ち、見上げていた。
幾重にも重なった花びらの向こうに、薄い青い空が見える。
何度かこの桜が咲いた季節をこの屋敷で過ごしていた。
なのに、こうやってじっくりと見つめるのは初めてだった。
綺樹(あやな)がまだ偽装の妻だった時、愛人の元から久々に戻った際に、言ってたな。
“散り始めたよ。
日本語で、幽玄の世界って言うの?
ああいうことを言うんだな。
明日の朝、見てみたら?“