Storm -ただ "あなた" のもとへ-

「車まで送る。
 まだ早朝で物騒だ」

「たぶん、どっかにいるから大丈夫」


ボディーガードのことだ。

ということは、綺樹が自分に会いに来たということを、あの二人に報告されるのだろう。

そして二人はこの事実を歓迎しないだろう。

涼は綺樹が身支度をするのを眺めていた。

イヤリングとネックレスはするのが面倒らしく、小さなクラッチバックに押し込んでいる。

放り出した靴を履いて涼へと振り返った。

その様子に涼の口元はほころんだ。

雪の女王じゃなくて。

思わずメルヘンな言葉が浮かんで、打ち消した。

戻るのが無理ならば、一時の夢を与えてくれればいい。

この先もずっと。

いつでも待ってる。
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