Storm -ただ "あなた" のもとへ-

でも、それは言えない。

今、精一杯言える言葉。


「またな」


綺樹が意味を探ろうとするように斜めに見上げた。

瞳が合う。

心の奥を覗き込まれて、本心をわかってもらいたかった。

でも瞬時に外される。


「ああ」


いつも通りそっけない答え。

涼はモノクロの空の下、去っていく小さな背中を見送っていた。

灰色のビルの谷間で、そこだけ、ブルーグレーの透明で淡い光。

一体、この関係はどこへいくのだろうか。
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