Storm -ただ "あなた" のもとへ-
「なんとかならないのか?」
綺樹は不審な顔をした。
同じく働いている立場ならその発言は無いだろうといいたげだ。
「俺のせいで、インドの仕事を引き受けざる得なかったんだろ。
心配なんだ」
むっつりとして言うのを聞きながら、綺樹は目を逸らせてグラスに口をつけた。
そうか。
そういう意味でこっちにも気を使わなくてはいけなかったか。
綺樹は頭が痛くなり、目を閉じた。
「そうだな。
また来週末からスペインの仕事だから、それまでは詰めなくてはいけないけれど、その後のスケジュールを見直してみるよ」
目を閉じていたから涼の様子には気が付かなかった。
「こんな時にもスペインに行くのか?」
涼の口調に気が付かずに、綺樹は時間がきたのに立ち上がって、携帯と財布をかき集めた。