Storm -ただ "あなた" のもとへ-
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携帯電話の着信はダバリード総帥のさやかからだった。
かかってくる場合、綺樹に関しての事しかない。
嫌な予感がした。
「女王?」
「フェリックス。
同じ過ちを繰り返す訳にはいかないわ」
開口一番の言葉だった。
何を言っているのかはわかる。
「つまり?」
「そうね。
どうしましょうか?」
既に決定しているのだろうに。
フェリックスは椅子の背によりかかった。
静かな書斎に、椅子がきしむ音が響く。
「だけどあの二人は、互いの」
フェリックスは言葉を探した。
求めかた、という言葉は使いたくなかった。
「依存度は、尋常じゃないぞ」
「だからこそ“美しき思い出”でするべきじゃないかしら?
別のものに縛り付けて」
フェリックスはしばし黙り込んだ。