Storm -ただ "あなた" のもとへ-

  *

週末に教会へ行った。

その週の初めに、涼が結婚式をすると突然言い出したことに驚いた。

しかもドレスもそれに合わせる小物もブーケも全て手配が済んでいた。


「女って、ウェディングドレスを選ぶのが夢なんだが」

「ああ、そうか。
 それは悪かったな」


悪いとは思っていない、あっさりとした口調で涼は返した。


「なんせ、おまえのことだ。
 また、しなくていいと言い出しそうだし、着たことのあるドレスを持ち出しそうだったからな」


本当は内心、式をすることに躊躇があった綺樹は目を泳がせた。

選んでくれたドレスに着替え、メイクも済ませて控え室で綺樹は一人座って
いた。

ドレッサーに置いていた携帯を手に取り窓辺の椅子に座る。

しばらくそのままだった。

やがて通話を押した。

その様子を涼はドア陰から静かに見ていた。
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