Storm -ただ "あなた" のもとへ-

    *

綺樹はふと左手にはまっている指輪に時々目を留めていた。

一度目の結婚の時に使った指輪に、もう一つ日にちを彫ってもらった。

またこの指輪をはめることになるとは。

とても不思議だった。

そして結婚していることも不思議だった。

結婚したことで別に涼との生活に変化はなかった。

ただ涼に落ち着いた感じが出て、ほっとした。

綺樹自身も涼の隣だと良く眠れた。

あれほど眠れない日々だったのに。

もっとも寝る時間はほとんどないのだけど。

綺樹は口元で歪めた笑いを作った。

土曜日からスペインに来ていた。

フェリックスの存在は涼にはとても心配らしかった。

前日の夜は珍しく涼にしてはしつこくて、中々離そうとしなかった。

そういうのも悪くない。

思い出すと声が聞きたくなる。
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