Storm -ただ "あなた" のもとへ-

   *

医者から電話が入った。

配偶者を同行してくれという。

そして必要だったら通訳を付けるとも言っていた。

つまり重症ということか。

どこかで察していたのか、涼は冷静だった。

綺樹の携帯に電話をした。


「綺樹」

「ああ、どうしたの?」


そういいながら、綺樹が部下に指示をしているのが聞こえる。


「今、忙しいか」

「これからインドのとこと衛星会議なんだ」

「そうか」


涼の返答の様子に、綺樹は手を止めた。


「どうしたの?」

「頭痛で見てもらった医者が配偶者を同行して欲しいというんだ」


息が止まる。


「おれが日本人だから医療用語の理解のため、場合によっては通訳をつけたほうがいいといっている」


綺樹は自分の指が震えているのを見た。
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