Storm -ただ "あなた" のもとへ-

「候補があるのか?」


さやかが笑った。


「お互い候補をたてましょう。
 選択ぐらいはさせてあげないと」


フェリックスには選択の余地が無いらしい。


「わかった」


その気持ちを読んだのか、さやかが含み笑いをした。


「もちろん、そちらの候補があなたでもいいのよ」


フェリックスは鼻先で笑って、即答した。


「ご免こうむる」

「そう?
 残念だわ。
 あなたなら、こちらも異存は無いのに」


フェリックスは苦笑した。

あやしいものだ。

切れた携帯をデスクの上に置いて、椅子の背に頭をつけた。

もう夕方だというのに、強い日差しが暗い室内を斜めに切り裂いている。

熱風が吹きこみ、厚手のカーテンをはためかせた。

候補か。

壁に映る、光の明と暗の境目をみつめながら、フェリックスは呟いた。
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