Storm -ただ "あなた" のもとへ-

   *

MRIも撮った。

その後の説明の時に綺樹が駆け込んできた。

見立ては変わらなかった。

脳に腫瘍が出来ている。

切除するのに難しい位置にある。

成功しても記憶をつかさどる場所にあるため、記憶障害が起こる可能性が高い。

性格や趣向、などなど変わる可能性もある。

ただそのままにしていると生存確率は低い。

3D画像で説明されて、涼はその鮮明な映像の方に妙に感心した。

廊下に出て3人は立ったままでいた。


「とりあえず帰りましょうか。
 今日はご足労いただきましてありがとうございました」


涼は尚希に頭を下げた。

尚希は綺樹と視線を交わらせてから帰って行った。


「さて、おまえは職場に戻るのか?
 そのまま家に帰るか?
 それによって夕食の材料の買い方が変わるんだが」


綺樹は信じられない思いで涼を見上げた。
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