Storm -ただ "あなた" のもとへ-

こんな時に夕食か。

涼はちらりと綺樹を見下ろした。


「しょうがないだろう。
 くよくよしたって。
 なるようにしかならない」


確かにそうかもしれないが、そういうもんじゃないだろう。

綺樹は廊下のベンチに座り込んだ。

涼はため息をついて隣に腰をおろした。 


「手術を受ける気はない」


ぎょっとして振り仰ぐ。


「なんだって」

「人には決められた寿命がある。
 手術をしたって成功しないさ。
 しても、長くないだろう。
 たぶん、ここが俺の寿命なんじゃないか?」


綺樹は穴の開くほど涼の顔をみつめる。

なんだって、この男は淡々としているのだ。


「おまえから解放されるのも悪くない」
< 442 / 448 >

この作品をシェア

pagetop