Storm -ただ "あなた" のもとへ-
涼は笑いながら、ふざけた口調で言った。
でも綺樹には冗談に聞こえなかった。
それは本心か?
そうだ。
それが、いつでも涼の奥底にある本心だ。
綺樹は廊下のタイルを見つめた。
金で寿命は買える。
特にウルゴイティとダバリードの力があれば。
「手術を受けてくれ」
ベンチのふちを握り締める。
「頼むから。
生きてくれ」
綺樹はタイルを凝視していた。
「私の記憶が無くなったっていい。
思い出さなくてもいい。
大丈夫。
その時はお前の前に姿を現さない。
二度と苦しめないさ。
お前の人生に関わらない。
この地球のどこかでおまえが生きていれば、それでいいから」
綺樹は涼へ顔を向けた。