Storm -ただ "あなた" のもとへ-
「わかった。
ただ離婚届と婚姻届を両方書いてもらう。
手術後に変わらなかったら直ぐに再婚だぞ」
睨むようにして言うと綺樹はやっと笑みを上らせた。
「約束するよ」
「ならいい」
さて、と言って涼は立ち上がった。
涼には奇妙な自信があった。
綺樹を忘れない自信と、忘れても直ぐに思い出せる自信。
この変わらない愛情について。
だから涼は大して離婚に気を止めなかった。
この間、交わしたばかりの協議書に、この点についてあらかじめ手配を加え
ておこう。
そして婚姻届さえ手にあれば、綺樹の気休めに付き合ってもいいだろう。
それ位の気持ちだった。
綺樹は涼の腕に自分のを絡ませた。
涼が見下ろしてにっこりと笑うのを見た。
でも綺樹は違った。