Storm -ただ "あなた" のもとへ-
空から涼に視線を移した。
にっこり笑う。
「大丈夫。
全て上手くいくさ」
涼も笑った。
「ああ」
上手くいくよ、涼。
あなたに平穏な日々を返してあげる。
自由な日々を。
通りがかった公園の野外劇場から、オーケストラの演奏が流れてきた。
テノールが響き渡る。
綺樹が小さな声で合わせて歌う。
その珍しさに涼は妻の顔を見降ろした。
イタリア語だが、英語バージョンを聞いたことがある。
“It’s time to say good bye”
二人の旅立ちの歌。
あなたと共に旅立とう。
舟に乗り、海へ。
まだ見もせぬ場所へ。
綺樹の澄んだ眼差しは柔らかく、微笑みは穏やかだった。
涼も口元を緩めた。
それがあなたにしてあげられるgiftだから。
end
but
to be continued