Storm -ただ "あなた" のもとへ-
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”WHO GET”
それが見出しだった。
涼はあれから1週間程で次の土地に旅立った。
今度はパブでの職だ。
場所柄、閉店後にはゴシップ誌の類がよく捨て置かれていた。
掃除の合間に、ぱらぱらめくると、時々小さく綺樹のことが載っている。
今日もだ。
若きウルゴイティの当主だ。
その出自はあまり芳しくないとしても、まぎれもない現当主なのだ。
成り上がりであまり歴史がない者や、長い歴史の内に財産が干上がってきた者たちには格好のターゲットだ。
雑誌をごみ箱に投げ入れて、モップ掛けを再開する。
仕上がりに満足すると、店主に帰ることを告げて店を出た。
街は出勤する人々で賑わっていた。
途中でいつもの店で食料を仕入れ、レジのおばちゃんにいつも通り一つ愛想を言う。
全く変わらない日常だ。
涼は半地下の自分の部屋への階段を降りた。
ドアをあける。
昨夜出掛けた時と全く変わらない部屋。
涼はちょっと笑ってしまった。
体の力を抜く。
何を期待しているのか。