Storm -ただ "あなた" のもとへ-

  *

”WHO GET”

それが見出しだった。

涼はあれから1週間程で次の土地に旅立った。

今度はパブでの職だ。

場所柄、閉店後にはゴシップ誌の類がよく捨て置かれていた。

掃除の合間に、ぱらぱらめくると、時々小さく綺樹のことが載っている。

今日もだ。

若きウルゴイティの当主だ。

その出自はあまり芳しくないとしても、まぎれもない現当主なのだ。

成り上がりであまり歴史がない者や、長い歴史の内に財産が干上がってきた者たちには格好のターゲットだ。

雑誌をごみ箱に投げ入れて、モップ掛けを再開する。

仕上がりに満足すると、店主に帰ることを告げて店を出た。

街は出勤する人々で賑わっていた。

途中でいつもの店で食料を仕入れ、レジのおばちゃんにいつも通り一つ愛想を言う。

全く変わらない日常だ。

涼は半地下の自分の部屋への階段を降りた。

ドアをあける。

昨夜出掛けた時と全く変わらない部屋。

涼はちょっと笑ってしまった。

体の力を抜く。

何を期待しているのか。
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