Storm -ただ "あなた" のもとへ-
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紙のこすれる音とコーヒーの匂いで目を開けた。
涼が窓辺の椅子に座り、カップ片手に新聞を読んでいた。
綺樹はベットにうつぶせた姿勢のままでその姿を眺める。
日の光が涼の横顔を照らし、陰影を作っていた。
こういう生活になってから、危険な感じも漂うようになり、新たな魅力になっている。
ぼんやりと見つめていた。
本当にこの頃は大変だった。
どいつもこいつも、金と伯爵の地位に目の色を変えやがって。
綺樹個人に言い寄ってくるなら、どんな扱いでも出来る。
困ったことにアヤナ・ウルゴイティに対してだ。
言い寄ってくる者も、いつもバーなどで引っ掻けるような者達でない。
邪険にできない。
あくまでも、のらりくらりと。
角が立たぬよう、後々に響かぬよう。
そういう方法はおよそ自分に向いていない。
とてもとてもストレスがたまる。
そして特にあの二人の男。
さやかが推す男。
フェリックスが推す男。
とりあえず、涼は論外ということか。