Storm -ただ "あなた" のもとへ-

  *

紙のこすれる音とコーヒーの匂いで目を開けた。

涼が窓辺の椅子に座り、カップ片手に新聞を読んでいた。

綺樹はベットにうつぶせた姿勢のままでその姿を眺める。

日の光が涼の横顔を照らし、陰影を作っていた。

こういう生活になってから、危険な感じも漂うようになり、新たな魅力になっている。

ぼんやりと見つめていた。

本当にこの頃は大変だった。

どいつもこいつも、金と伯爵の地位に目の色を変えやがって。

綺樹個人に言い寄ってくるなら、どんな扱いでも出来る。

困ったことにアヤナ・ウルゴイティに対してだ。

言い寄ってくる者も、いつもバーなどで引っ掻けるような者達でない。

邪険にできない。

あくまでも、のらりくらりと。

角が立たぬよう、後々に響かぬよう。

そういう方法はおよそ自分に向いていない。

とてもとてもストレスがたまる。

そして特にあの二人の男。

さやかが推す男。

フェリックスが推す男。

とりあえず、涼は論外ということか。
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