Storm -ただ "あなた" のもとへ-
そこへいきなりドアが乱暴に叩かれた。
「リョウ、いるんでしょ。
開けてよー!
朝食買ってきたよ。
一緒に食べようよ」
まだあどけなさが残った女の声だ。
たぶん高校生くらいだろう。
ドアの方を向いていた涼の視線が綺樹へ移った。
目が合う。
涼は黙って新聞とカップを置くとドアへ歩み寄った。
「どうした?」
ドア越しに話し掛ける。
「なにって、差し入れに来たのに決まってるじゃない。
早く開けてってば」
涼はため息をついた。
「悪いけど。
客がいるんだ」
しばし沈黙になる。
「誰っ」
「悪いけど、帰ってくれ」
「リョウ!」
涼は無視してドアの前を離れると、自分のコーヒーカップを取り上げた。
新しくお湯を沸かす。