Storm -ただ "あなた" のもとへ-
「客って誰よ!
女を入れていたら承知しないから」
暫くドアを叩き続け、ドアノブをがちゃがちゃといわせていた。
「今夜、店にいくからねっ」
最後に叫んで行ってしまった。
やかんの沸騰する音がやけに大きく聞こえる。
私は客か。
綺樹は寝返りをうって体を横にした。
「恋人、なの?」
綺樹が落ち着いた様子で聞くと、涼はちらりと見た。
「いや。
コーヒー入った」
ちょっと持ち上げてから、テーブルに置いた。
綺樹が再び貸したシャツを着てテーブルにつく。
肩をすぼめるようにして、両手でカップを持ち、コーヒーをすすっている様子に
笑うと、上目づかいで睨まれた。
「綺樹。
なんで、恨んでいると思ったんだ?」
「ん?」
「こういう生き方に、すっげー強硬な態度で誘導したくせに、なんで急に気弱になったのかと思って。
なんかあったか?」