Storm -ただ "あなた" のもとへ-

やがて足音も聞こえなくなる。

涼はノブを乱暴に掴むと、ドアを叩き閉めた。

凶暴な気持ちになるのは、立ち位置だけのせいじゃない。

嫉妬だ。

必死に頭から追い払っていたが、綺樹は候補と言われている二人の男と寝ている。

絶対だ。

テーブルの上においてあったマグカップを掴むと、流しに投げつけた。

割れる音と共に液体が飛び散る。

これで最後かもしれない。

内臓が固まるような重い苦しみに、涼はテーブルを両手でつかみ、必死に耐えていた。
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