Storm -ただ "あなた" のもとへ-

あいつは予想していたな。

はとこの成介が、固い表情のままだったのを思い出す。

ま、検討を祈るぞ、成介。

継ぎたくない社長を継がざる得ないだろう成介に対して、軽くエールを送る。

並木道を曲がった先の正門に一人の男が立っていた。

涼が近づくと、脇の小門ではなく、鉄製の正門を開けた。


「行ってらっしゃいませ」


執事の藤原はいつもどおり頭を下げた。


「藤原、体に気をつけろよ」

「旦那様もお気をつけて」


あくまでも当主として扱うのに、涼は少し苦笑した。

片手を上げて別れの挨拶に代えると、外へ踏み出す。

いい天気だ。

新しい門出に相応しい。

おまえは運がいいもんな。

綺樹(あやな)の皮肉っぽい口調が思い出される。

涼は微笑して歩き出した。
< 6 / 448 >

この作品をシェア

pagetop