Storm -ただ "あなた" のもとへ-
あいつは予想していたな。
はとこの成介が、固い表情のままだったのを思い出す。
ま、検討を祈るぞ、成介。
継ぎたくない社長を継がざる得ないだろう成介に対して、軽くエールを送る。
並木道を曲がった先の正門に一人の男が立っていた。
涼が近づくと、脇の小門ではなく、鉄製の正門を開けた。
「行ってらっしゃいませ」
執事の藤原はいつもどおり頭を下げた。
「藤原、体に気をつけろよ」
「旦那様もお気をつけて」
あくまでも当主として扱うのに、涼は少し苦笑した。
片手を上げて別れの挨拶に代えると、外へ踏み出す。
いい天気だ。
新しい門出に相応しい。
おまえは運がいいもんな。
綺樹(あやな)の皮肉っぽい口調が思い出される。
涼は微笑して歩き出した。