Storm -ただ "あなた" のもとへ-
「でもどっちもおいしいよね。
 オラジュアンの持っているアフリカの金やレアアースなどの主な採掘権。
 ミハイロフの持っている、ロシアの石油や天然ガスなどの、各種資源の採掘権。
 これから資源確保はとても重要だ。
 迷う。
 実に迷う」


考え込む表情になり、煙草の煙がゆっくりとたなびいた。

ぼんやりと窓の外を見ている横顔をさやかはみつめていたが、立ち上がった。


「そんなに時間をあげられないわ」

「わかってる」


畳み掛けられて、綺樹は視線を床へ落とした。

立て続けに何本も煙草を吸い、さやかの残り香を煙草の匂いで消していく。

早くどっちかに決めないと。

マグカップのコーヒーを飲んで、少し眉をしかめた。

アルコールは胃に沁みるため、コーヒーの量が増えていたが、コーヒーも辛い。

固形の食物はもっと受け付けなかった。

少し無理すると吐いてしまう。

結婚相手を選ぶだけなのに、結構なストレスだよな。

綺樹はビルの群れを眺めながら、長く煙を吐いた。

仕事以外で悩まされたくないのに。

綺樹は唇を結んだ。

仕事だ。

考えずにとにかく仕事をしないと。

いざとなったらサイコロで決めてしまえばいい。
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