Storm -ただ "あなた" のもとへ-

  *

定期的にスペインに戻って当主としての仕事は続けていた。


「フェリックスは?」


出迎えてくれた執事に聞く。

朝のジョギングに出ているらしい。

綺樹にとっては信じがたいが、人の趣味に口を出すほど野暮じゃない。

息を切らせているのを眺めながら、からかうのは面白そうだ。

走るルートを知っている綺樹は、途中で待つことにした。

朝から日差しが強い。

気温も既に上がり始めていた。

屋敷からはしばらく砂利敷きが続き、そこからは緑の草原が広がっている。

短く刈り込んであり、踏みしめると弾力がある。

ふわふわと宙を歩いているような感触だ。
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