Storm -ただ "あなた" のもとへ-
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定期的にスペインに戻って当主としての仕事は続けていた。
「フェリックスは?」
出迎えてくれた執事に聞く。
朝のジョギングに出ているらしい。
綺樹にとっては信じがたいが、人の趣味に口を出すほど野暮じゃない。
息を切らせているのを眺めながら、からかうのは面白そうだ。
走るルートを知っている綺樹は、途中で待つことにした。
朝から日差しが強い。
気温も既に上がり始めていた。
屋敷からはしばらく砂利敷きが続き、そこからは緑の草原が広がっている。
短く刈り込んであり、踏みしめると弾力がある。
ふわふわと宙を歩いているような感触だ。