Storm -ただ "あなた" のもとへ-
「フィーの乱心相手は綺樹かもね」
呟くように言う。
沈黙にユーリーは綺樹へ顔を向けた。
壁に寄り掛かり、腕を組んだ姿勢のまま、ただじっとこっちを見つめていた。
組んでいた腕をほどくと片手をちょっとあげて、おろした。
「あいつは、私にとって、あいつが思っているよりもずっと重要な奴だよ。
色々な意味でね」
ユーリーは微笑した。
「それを彼に言って上げたら?」
「どうして?
あいつは別に聞きたくもないだろうよ」
「なんで、フェリックスが外出した理由を知りたいの?」
「気になるから」
真顔で綺樹は何の含みもなくいった。
「あいつは私のことをとてもよく色々知っている。
なのに私はあいつのことはさっぱりだ。
不公平だ」
ユーリーは笑った。
「フェリは綺樹が思っているほど、非情でも薄情でも冷酷でもないよ。
かなり、普通の男だけど」
「へえっ」
全く、綺樹は本気に取らなかった。
「私の娘達と言っている女性を知っている?」