Storm -ただ "あなた" のもとへ-
綺樹は顔をあげ、しばらくユーリーを眺めていた。
「ああ」
合点が言ったように言葉を発した。
「高級売春宿か」
ユーリーは吹き出した。
「ストレートだなあ」
綺樹はにやっと笑った。
「だけど、なるほどね。
この頃は淑女を見ればそれは彼女の娘だ、と言われているものな。
フェリックスらしい趣味だ」
ユーリーは首をひねった。
「趣味ねえ。
ウルゴイティの経営に関わるようになったからじゃない」
綺樹は目を細めた。
「どういう意味?
そんなに給料はやってないよ」
ユーリーは笑いながら肩をすくめた。
「気軽に、恋人を持てない身分になったからね。
ゴシップに取り上げられたり、噂から勤め先でやりにくくなったり、嫌がらせを受けたり、相手の生活が壊される。
ロンドンにいた頃から、付き合っていたサラとはそれで上手く行かなくなったようだしね。
彼なりにストレスは溜まっているんだよ」
綺樹は手を口元に持っていくと考え込む表情になった。