Storm -ただ "あなた" のもとへ-

    *

朝早く戻ったフェリックスが自分の使っている書斎に入ると、綺樹がデスクに座っていた。


「よう」


綺樹がここに居る理由がわからない。

無言のままフェリックスは机の横に立つと、ちらりと見下ろし、書類を手にとってぱらぱらとめくった。


「で、昨日の女には満足できたの?」


フェリックスの手が止まった。

綺樹はにやりと笑った。

探るようにじっと見下ろすと、綺樹は顔をそらせた。


「お前はどう策を練っているの?」


綺樹は真っすぐ前を向いたまま静かに聞いた。


「私が利益ある結婚をして、その夫とともにウルゴイティを動かすために、おまえを追い出す可能性は高い」


フェリックスは不敵に笑った。

綺樹も笑う。


「愚問だったみたいだな。
 とても安心したよ」


立ち上がってドアへと歩き、ノブをつかんで振り返る。
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