Storm -ただ "あなた" のもとへ-
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朝早く戻ったフェリックスが自分の使っている書斎に入ると、綺樹がデスクに座っていた。
「よう」
綺樹がここに居る理由がわからない。
無言のままフェリックスは机の横に立つと、ちらりと見下ろし、書類を手にとってぱらぱらとめくった。
「で、昨日の女には満足できたの?」
フェリックスの手が止まった。
綺樹はにやりと笑った。
探るようにじっと見下ろすと、綺樹は顔をそらせた。
「お前はどう策を練っているの?」
綺樹は真っすぐ前を向いたまま静かに聞いた。
「私が利益ある結婚をして、その夫とともにウルゴイティを動かすために、おまえを追い出す可能性は高い」
フェリックスは不敵に笑った。
綺樹も笑う。
「愚問だったみたいだな。
とても安心したよ」
立ち上がってドアへと歩き、ノブをつかんで振り返る。