Storm -ただ "あなた" のもとへ-
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全て夢、だろうか。
目を覚ました綺樹(あやな)はベッドの天蓋を、しばしぼおっとしていた。
圧迫するような静けさの中、外で鳥がさえずっているのが聞こえる。
ペルシャ絨毯の上に降りると、素足にシルク特有の冷たさが伝わる。
全て変わらぬ、ウルゴイティでの朝。
身支度を整えて、階下に降りた。
いつもどおりの使用人の立ち位置。
いつもどおりの挨拶。
ダイニングテーブルにつくと、目の前に綺樹用のメニューの朝食が並ぶ。
今一、柔らかすぎるご飯。
ちょっと味のぼけた味噌汁。
目玉焼きだけがまともだ。
手をつける前に、はっきりさせようと思った。
「新聞」
手を差し出すと、載せられる。
日付に目を走らせた。
少し伏せられたまつげが微動する。
皿越しに、ダイニングテーブルへ放り投げ、箸を手に取った。