Storm -ただ "あなた" のもとへ-

   *

全て夢、だろうか。

目を覚ました綺樹(あやな)はベッドの天蓋を、しばしぼおっとしていた。

圧迫するような静けさの中、外で鳥がさえずっているのが聞こえる。

ペルシャ絨毯の上に降りると、素足にシルク特有の冷たさが伝わる。

全て変わらぬ、ウルゴイティでの朝。

身支度を整えて、階下に降りた。

いつもどおりの使用人の立ち位置。

いつもどおりの挨拶。

ダイニングテーブルにつくと、目の前に綺樹用のメニューの朝食が並ぶ。

今一、柔らかすぎるご飯。

ちょっと味のぼけた味噌汁。

目玉焼きだけがまともだ。

手をつける前に、はっきりさせようと思った。


「新聞」


手を差し出すと、載せられる。

日付に目を走らせた。

少し伏せられたまつげが微動する。

皿越しに、ダイニングテーブルへ放り投げ、箸を手に取った。
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