Storm -ただ "あなた" のもとへ-

   *

この間の2回で、綺樹のノックの音を聞き分けられるようになった。

ドアを開けると、いつもの白いシャツにパンツ姿だった。


「今日はパーティじゃないんだな」

「出張」


疲れた様子でぼそりと答える。


「出張?」


この周辺に綺樹の仕事相手となる会社があっただろうか。

綺樹はダイニングチェアに座り、背もたれによりかかると、たっぷりとしたため息をついた。


「そう。
 リオで」


ブラジルのリオデジャネイロのことらしい。


「途中下車だな」


面白かったらしく少し口元を緩めた。

そのままテーブルの上に広がっている新聞を眺める。

仕事から帰ってきて、朝食をとりながら読んでいたものだ。

丁度、ゴシップ欄だった。

涼は冷蔵庫から小型のビール瓶を出し、栓を抜くと直接口をつけた。

朝からビールというのは主義ではなかったが、仕事上がりの一杯は欠かせない。

綺樹はやや乱暴に新聞を畳んだ。
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