Storm -ただ "あなた" のもとへ-

綺樹は体を震わせながら何回もえずいた。

何も出てこない。

胃液さえもだ。

その辛さは単なる嘔吐よりも何倍も苦しい。

思わず言葉を失う。


「綺樹。
 大丈夫か?」


涼の腕にかかっている重さが増した。

なにか綺樹が言った。


「なんだ?」


綺樹は何度かくちびるを動かして、やっと言葉にした。


「横になりたい」


涼は綺樹を抱えるようにしてベットに連れていった。

綺樹はうつぶせに横たわった。


「ちゃんと医者にみせたか?」


かすかに頷いた。


「かなり、悪いぞ。
 真面目に薬を飲んでるか?」


今度はなんの返答もなかった。
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