Storm -ただ "あなた" のもとへ-
落ち着かせる意味で片手を綺樹の頭に置き、涼は壁の上部にある窓から入ってくる朝日が壁に模様を描くのを見ていた。
かすかな寝息が聞こえてきたのに、綺樹の顔を覗き込むと、すっかり眠り込んでいる。
あどけない寝顔に口元が緩む。
とりあえず、また綺樹は現れた。
もう来ないかもしれないと思う度に、内蔵が凍るような感触を味わった。
だから次の土地に旅立った。
移動を繰り返せば、待つという状況は回避できる。
涼も綺樹の隣に身を横たえ、顔にかかっている髪をそっと取り除いた。
顔色が悪かった。
青いのを通り越し、土気色だ。
会うたびに体調が悪化しているような気がする。
頬を人差し指の背で撫でながら、見つめ続けた。
長いが栗色のばさばさのまつげ、通った鼻筋。
結婚しても現れたら?