Storm -ただ "あなた" のもとへ-

胃潰瘍でもかなり悪いはずだ。

点滴だけで長くは暮らせない。

物が食べられるようにならないと。

その治療がうまくいっていないようだ。

手術で切らなくてはならないのではないか。

それに踏み切っていないところを見ると、なにかしら問題があるのだろうか。

ちりんちりんと軽やかなベルが鳴る音がする。

一体なんの音か涼にはわからなかった。

音源を探す。

畳まれた新聞の下に家の鍵らしいのと一緒になっている所でやっと見付けた。

それは久しぶりに見る携帯電話だった。

大きな液晶画面に名前のスペリングが点滅していた。

それを読んだ涼は綺樹の方を振り返った。

確か一度会ったことがある秘書だと思うが。

目を覚ましそうにない綺樹を、起こした方がいいのか悩んでいるうちに音が途絶えた。

交代で遠慮深いノックがした。


「だれ?」
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