Storm -ただ "あなた" のもとへ-
「胃潰瘍です。
ただ、同時に、拒食症になっています。
それはご本人には言っておりません。
医者と相談しまして、そう判断いたしました。
なぜなら」
グレースはしっかりと涼をみつめた。
「それを知っておしまいになると、余計にご自分を追い詰めてしまいそうですから」
涼はしばらくグレースの顔をみつめ返したまま考え込んでいた。
「そこまで追い詰めて、なぜ原因の結婚を強要するのを少し伸ばしてやれない?」
「さやかさまの判断は、たとえ延ばそうとも状況は同じだと」
「どうかな。
年をとれば、諦めと妥協を学ぶだろ」
「何の諦めと妥協ですか?」
涼は腕を組んだまま、じろりとグレースを見下ろし、かすかに口元で笑った。
「綺樹さまは、あなたのそういう部分はご存じないのでしょうね」
そう、綺樹には見せまいとしている。
限りなく自己中心的で、他の人間に対して非情であることを。