Storm -ただ "あなた" のもとへ-
涼は部屋を飛び出し、木造の階段を3段跳びで駆け下りた。
背後から迫る轟音に、綺樹は驚いたように立ち止まり振り返っていた。
「その話、乗った」
涼の言葉に顔が引き締まった。
「断わる」
背を向けて歩き去ろうとする。
「このままじゃ、お前、長くないぞ」
「だから?」
肩越しに綺樹は艶のない目で見つめ返した。
やっぱり死ぬことに対して抵抗が無い。
元々、生きることに意欲が薄いと思ってはいたが。
綺樹のこういうところがもの凄く不安なのだ。
「おまえを料理人に雇ったら、私が実行したことの意味が無くなる」
「そうか?
給料、弾んでくれるだろう?
そうしたら当分働かずに、旅行が出来そうでいいんだが」
にやっと笑って言うと、綺樹の表情が微妙に変わった。
追い討ちをかける。