Storm -ただ "あなた" のもとへ-

なぜだかシャンパンを飲み干してしまったら、体の中がすこんと空洞になり、泣きだしそうになったのだ。

この生活はもうすぐ終わる。

そしてその先に涼はいない。


「薬、飲んでいったか?」


涼は手を止めて顔を向けた。

綺樹はその顔を何気なく見つめた。

そして自分がどういう目でみつめてしまっているかに気付くと、あわてて立ち上がった。


「ああ、飲んでなかった。
 飲んでくるよ」


嘘だった。

ばかだ。

あれほど自分に言い聞かせているのに。

縋るような目をしていたに違いない。

雇用関係が終わった時、自分たちの関係も終わりだ。

涼もわかっている。

このまま何事もなく、あっさりと、潮が引くように終わらせないと。
静かに。

互いを過去の人とする。
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