Storm -ただ "あなた" のもとへ-

   *

最初の頃は週末も不安で休みにせず、食事を作っていた。

見ていないと食べないというのだけでなく、倒れているのではないかという不安だった。

初めて週末を休みにすると意気揚々とレンタカーを借り、郊外へと走らせる。

あてもなく走り、どこかに泊まる、いつも通りのちょっとした旅行をする積りだった。

だがNYから段々と離れるにつれて不安が頭をもたげてくる。

綺樹には泊りで旅行に行ってくると言った。

ならば、あのペントハウスに誰か連れ込むかもしれない。

あるいはどこかへ泊りに出るか。

涼は自分の唇が引き締まり、眉間にしわが寄ってくるのを感じた。

駄目だ。

車をUターンさせ、NYに戻り始める。

買い物をすませ、ペントハウスに着いたときは黄昏時だった。

家の中は薄暗い。

出かけたのだろうか。

遠くでピアノの音が聞こえるのに、音の方へ歩き出した。

大広間のドアを開けて、視線を走らせる。

男と絡み合っていたら、水を差す気だった。
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