Storm -ただ "あなた" のもとへ-
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最初の頃は週末も不安で休みにせず、食事を作っていた。
見ていないと食べないというのだけでなく、倒れているのではないかという不安だった。
初めて週末を休みにすると意気揚々とレンタカーを借り、郊外へと走らせる。
あてもなく走り、どこかに泊まる、いつも通りのちょっとした旅行をする積りだった。
だがNYから段々と離れるにつれて不安が頭をもたげてくる。
綺樹には泊りで旅行に行ってくると言った。
ならば、あのペントハウスに誰か連れ込むかもしれない。
あるいはどこかへ泊りに出るか。
涼は自分の唇が引き締まり、眉間にしわが寄ってくるのを感じた。
駄目だ。
車をUターンさせ、NYに戻り始める。
買い物をすませ、ペントハウスに着いたときは黄昏時だった。
家の中は薄暗い。
出かけたのだろうか。
遠くでピアノの音が聞こえるのに、音の方へ歩き出した。
大広間のドアを開けて、視線を走らせる。
男と絡み合っていたら、水を差す気だった。