noir papillon
ふっと吹いた小さな風。
降り注ぐ暖かな日差し。
【あれ?俺、どうしたんだっけ?】
うつ伏せの状態で呑気に考えるのはハル。
【あぁそうだ。俺、死んだんだ。ものの数秒で胸を貫かれ、あっという間に全てが終わったんだ】
此処は天国?
それとも地獄?
視界に映る黄土色の土を見つめそんな事を考える。
「何のつもりだ?この期に及んで邪魔をする気か?」
「邪魔だなんてそんな。俺が貴女に刃向かう訳が無いでしょう?」
耳に入ったその声は、聞き覚えのある2人の声。
何故ここで2人の声が聞こえるのか、ぼんやりした思考の中考える。
「だったらさっさと始末させろ。それとも何だ?其奴等に情でも移ったか?」
「ハハッ、冗談は止めてくれよ姉さん。情なんてそんなもの移る筈ないだろ?俺は只、彼等の始末に貴女の手を煩わせる必要は無いと思っただけだよ」
ハルを置いて続く会話。
痛む身体を動かすと、ぎこちない笑みを浮かべるカナメと、それを鋭く睨む柴架の姿が目に入った。