noir papillon
「君とこうして話していると楽しいよハル。だけどもうそんな時間は無いようだ」
「カナメ……」
何時にも増して真剣な表情を見せるカナメ。
胸騒ぎを覚えたハルは彼に駆け寄ろうと試みるが一歩も足を前へ進める事は不可能。
身体が動かなければ魔法さえも使えない。
「君達には本当に悪い事をした。悲しい思いをさせ辛い運命を辿らせてしまって、本当にすまなかった」
近づく別れを感じ首を横に振るハル。
悲しそうな顔をするハルを安心させようと、カナメは優しく笑ってみせる。
「今此処で起きた事は忘れてくれ。災厄の魔女の事も、柴架に関わる全ての事を。そして俺の事も全て、何もかも忘れてくれ、ハル」
その言葉と共にぐらりと揺れる視界。
何とかそれに耐えようとするも、一羽の黒蝶が視界を遮ったその瞬間、ハルの意識は遠退いた。