noir papillon

目に映る血飛沫は、自らの身体からあがるもの。


ボトリと音を立て落ちたのは弓を握る自らの腕。


その胸から生えるのは、深紅に染まる鋭い刃。


瞳に映る刃を握る女性の姿。


しかし次に目にしたのは、炎の揺れる奈落の底。


彼の身体は何時の間にか屋上の縁へと移動しており、バランスを崩しそのまま真っ逆様に地面へと落ちていった。




　「そろそろ機が熟した頃か…？」


男性の運命など気にする様子も無く、再び縁に腰掛ける彼女。

先程飲めなかった紅茶を口に含むと喉へと流す。




　「否まだ早い。その時が来るのはまだまだ先のようだ。暫しそれまで気長に待つとしよう。この世界に災厄をもたらしながら、な」


優雅に脚を組むと頬杖を付き、燃え盛る炎に包まれる町中を見下ろした。


もう生存者は誰一人として居ないのだろう。


人々の叫び声はとうにやみ、パチパチと燃える炎の音だけが響き渡る。


何が可笑しいのか、突然声をあげ笑い出す彼女。


そんな彼女の高笑いが、誰も居ないこの町中を埋め尽くす。