noir papillon

怪しい雲行きの空から舞い降りたのは、白い翼 の生えた天使でも、人々を光へ誘う女神でも無 い。


悪戯に微笑むこの人物は、この世に災厄をもた らし続ける魔女である。




 「貴様がこの町を襲った張本人か?」


 「だとしたらどうする?」


 「事実ならば捕らえるまで。『一筋の光は鋼 となりて 強固な鋼は鎖となる 天から伸びし光の鎖 罪有りし者を捕らえ裁きを与えよ!』」


中年の男の言葉に挑発した態度をとってみせる 柴架。


その様子に男はすぐさま魔法を唱え彼女の捕縛 を試みる。



が、しかし…




 「なっ!?」


天から伸びる強固な鎖は彼女の身体に巻き付く も、捕らえようと縛り上げた瞬間感じた違和感 。


幾重にも巻かれた鎖の輪は彼女の身体をすり抜 け何も捕らえる事無く地に落ちた。




 「…幻覚……魔法で作り上げた映像という訳か ……」


爪先で瓦礫を蹴り上げ、それを掴むと柴架へと 投げつけたミヤビ。


避ける素振りを見せない彼女の身体を透り抜け る瓦礫にブレる姿。


それを目に確信したミヤビは独り呟く。




 「残念ながら、今の私は実物では無い。捕らえる事も殺す事も、傷つける事すらも不可能と言う訳だ」


モカブラウンの髪を指に絡め、妖艶に微笑む彼女を目に、相対する4人は気を引き締め魔力を 集中させる。


彼女が今現在此処に存在していないとしても、 何が起こるかわからない。


現実味の無い想像出来ない出来事が、彼女の周 りではさも当たり前のように繰り広げられるの だから。










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