noir papillon

生き残るには、無事此処から抜け出すには、誰か1人を犠牲にしなければならない。


それが唯一の解決策。
他に打開策など有りはしない。
存在しないのだ。




 「この中の1人……」


 「惑わされるな!彼女の言っている事が真実とは限らない!」


 「だったら他に方法が有るとでも?俺には考えられないな」


 「っ……」


黒髪の男は柴架の言葉を信じ、反対に中年男性は柴架の言葉に疑いを抱く。


正反対の意見を持つ2人。
いがみ合う彼等は互いに引く気は無いようだ。





 「っ……」


少年は苦しそうに顔を歪め辛そうに息を吐く。


噴き出す汗は耐えかね雫となり地に落ちた。




 「…いい加減にして下さい……こんな時に──」


 「煩い!何もできやしない役立たずのクズは黙ってろ!」


 「っ……!」


言い争う2人の大人を見かねたミヤビ。


止めに入るがそれは苛立つ男の怒りを更に煽る事となる。




響く怒声。
握られた拳は風を切る。




 「 t' es un batard(最低だ)……」


バランスを崩し地に倒れたミヤビ。


ペッと血を吐き捨て口元を拭う彼女の姿を目に、少年は冷めた眼差しを男へと向けていた。










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