noir papillon
深く息を吐き痛みと怒りを落ち着かせるミヤビ。
暫く閉じていた瞳を開いた時、そこに映るのは腹を抱え声無く笑う柴架の姿。
「…そうか……そう言う事か……」
確信したように独り呟くミヤビ。
柴架を睨んだまま立ち上がる彼女は腰に差した剣を鞘から抜く。
「…初めから決まっていた訳だ……誰を狙い誰を殺すつもりなのか……何もかも全て、始めから……彼女の目的など、彼女の考えなどわかっていた筈なのに、なのに私は……」
自嘲気味に笑うミヤビ。
そんな彼女を目に少年は首を傾げ、中年男性は眉を潜め警戒する。
苛立つ黒髪の男は顔を歪め、見下ろす柴架は変わらず笑い続けていた。
「お姉、さん……?」
どうしちゃったの?と心配して声をかける少年。
するとミヤビは柴架から目をそらし、大丈夫だと少年に微笑みかけた。
「貴方達は逃げて下さい。この攻撃は全て私に向けられるもの。私の傍に居なければ、貴方達には害は無い筈。だから──」
「フンっ…気でも狂ったか。お前みたいなクズがこの数相手に何ができると言う?」
「…クズだからこそ、できる事だってあるんですよ……」
男性の言葉に苛立ちでも覚えたのか、ミヤビは剣の柄を力強く握る。
そして柄頭を結界にぶつけ、それを簡単に壊し外へ出た。