noir papillon
「Bonjour!」
ワンコールで受話器を取った珠里奈は明るくにこやかに挨拶をする。
そして数回受け答えを終えた後、彼女はカナメの名を呼んだ。
「何?何の用?」
「さぁ。よくわからないけれど、貴方と代われって」
受話器を受け取ったカナメは不思議そうに眉を潜め気だるそうに電話に出る。
「 Allô?」
机の上に脚を乗せ背もたれにふんぞり返る彼は面倒くさそうに受け答えをする。
「ん?あぁ、そうだけど?あぁ……あぁ……」
適当に返す彼だったが、途中から声のトーンは下がり神妙な面もちとなる。
その変化に気づいたのはハルだけでは無い様子。
キーボードを叩くリッカはその手を止め、話をしていたタクミとシンリは彼へと視線を移す。
「…あぁ…わかった……直ぐに向かう……」
短く言葉を交わし電話を切る彼の手から滑り落ちる終話音を鳴らす受話器。
ダラリと腕をたらし天を見上げる彼は何かから逃れるように瞳を閉じた。