noir papillon
額に触れる温かなそれは彼の大きな掌。
向けられるのは優しい瞳。
現状を把握できないミヤビは目をパチクリとさせた後、理解したのか頬を赤く染める。
「心配いらねぇよ、お前はもう何も失わない。俺達は絶対にお前の前から消えたりしないから」
にこりと微笑みクシャリと頭を撫でる彼の笑顔は眩しくて、見上げるミヤビは目を細める。
「てか、彼奴等がそう簡単にくたばるとは思えねぇし、カナメなんか化けてでもまとわりつきそうな気がするな」
「……」
思った事を口にしたハルの言葉にクスリと笑うミヤビ。
ハルは何が可笑しいのかと首を傾げるが、安心したように口元を綻ばすと椅子に座る。
「安心してゆっくり休め。俺がずっと傍に居るから」
「……」
ハルの言葉にコクリと頷くミヤビは目を閉じる。
すると彼女は直ぐに眠りについた。
微かに開いた窓の隙間から、一羽の黒蝶が迷い込む。
部屋の中をはためくと飾られた花に舞い降りて、静かに蜜を吸っていた。