noir papillon
「大丈夫ですか、カナメ?」
「も、問題無い」
心配して声をかけると、親指を突き立てカナメは振り返る。
格好でもつけたのかにっと笑うが、その鼻からタラリと血が零れ、タクミは苦笑しながら彼に手を貸した。
「なかなかやるじゃないかハル。あれは一体どんな魔法だ?」
「否、魔法なんか使ってねぇけど……」
馬鹿を言うなと笑いながら腕を肩に回され、打ち所が悪かったのではないかと眉を潜めるが、元々こんな奴だったと独り納得する。
「重傷だと聴いてたけど、もう何の問題も無く動けるなんて相変わらず凄いなミヤビは」
「凄いだなんてそんな。怪我も大したこと無かったし、周りが大袈裟なだけだよ」
ミヤビの頭をガシガシ撫でるシンリ。
まだ完全に治っていないのだから、そんなに乱暴に扱うのはどうかと思うが…
「僕の目には到底平気そうには見えないのですが、本当に大丈夫なんですかね」
「本人がそう言ってるから大丈夫なんじゃないか?多分……」
身体のあちこちに巻かれる包帯を目にしたら普通はそう思うだろう。
半日安静にしただけで治るような怪我ではないのにもう大丈夫だときかないし、止めようにも止める事ができなかった。
だから仕方なく帰ってきたのだが、怪我が悪化しても俺は責任なんてとれないとハルは心の中で思うのだった。
「うぅ…騒がしいのだ……」
机の上に突っ伏し眠っていたリッカは目を覚ましゴシゴシと目を擦る。
「悪いねリッカ。ハルが五月蝿くて」
「は?何で俺なんだよ?」
ハルのせいにするカナメはベッと舌を出す。
そして椅子に座ると5人をゆっくりと見渡した。
「さてと、全員揃った所だ。ここで重大な話をするとしよう」
何ふざけた事を言い出すのかと5人は目を向けるが、彼の真剣な顔を目に一同気を引き締めた。