noir papillon
「まぁまぁ、そんなに気を張るなよ君達。大した話じゃないからさ」
自分に向けられる鋭い視線を和らげるよう言うカナメは椅子をカタカタと前後に揺らして遊んでみせる。
「もったいぶるのは止めろ」
「そうですよカナメ。一体何です、話というのは?」
腕を組むシンリは眉間に皺を寄せ、柔らかな表情のタクミは優しい口調で語り掛ける。
「仕方ないなぁ。そんなに知りたいなら特別に──ってそこ!ウトウトしない!」
話をきりだそうとした所で目に入ったリッカの姿。
早朝でまだ眠い様子の彼女に向け手元にあったペンを投げるが、それは近くに居たミヤビがキャッチする。
「…さて、話を戻すとするか」
無言で微笑みかけられ、カナメは頬をかくとやっと本題に入ろうとする。
「既に理解してるとは思うが、このギルドは災厄の魔女と戦う為のギルド。そして君達は柴架を倒す為の精鋭と言う訳だ」
当たり前のように言うカナメだが、その言葉にキョトンとするハル。
しかしその他4人は理解しているようで、ハルはただ独り取り残されている。
「君達は彼女を倒す事ができる。否、君達しか彼女を倒す事が──」
「ちょっと待て!災厄の魔女と戦う?倒す為の精鋭?何を言ってるのかさっぱり……」
説明を求めるが面倒くさそうに目を細められ、助けを求めても救いの手は伸びてこない。
「まぁ、今まで何の説明もしなかったのは悪いと思うよ?だけどハル、君にだけ説明しなかった訳じゃないから」
彼が言うに、今口にした事は誰にも話してなどいないと。
しかし4人が何の動揺も見せず既に理解しているのは、共に過ごしてゆく内にこのギルドの本来の存在理由、自らの成すべき事を把握していったからである。
「説明なんかどうでもいいから、さっさと本題に入りなよ。本題に」
話の先が気になるシンリはハルの事などどうでもいいからとカナメを促す。
「ま、そう言う事だから。ごめんよハル」
シンリを怒らせては不味いと話を戻すカナメ。
全然話についていけそうもないハルは頭を抱え、嘆きながらも彼の言葉に耳を傾ける。