この恋は、絶対に秘密!
「本当に、何から何までありがとうございました。服はまたお返しします」

「いーえ。じゃあ……ご両親の説得、頑張って」



あぁ、最後に現実が重くのしかかる一言を……。

他人事みたいに(他人事だけど)素っ気なく言うのがまた彼らしくてちょっと苦笑する。



「はい。頑張りますね」

「健闘を祈ってます」



岬さんのエールに含み笑いしつつ、車を降りてもう一度頭を下げると彼は軽く手を上げた。


どうしようもない寂しさを抱きながら家まで歩き、門の手前で振り返ると、それを見届けたかのように彼の車はゆっくり発進していった。



すぐに行かない所が、やっぱり優しいよね……


胸にじわりと広がる温かさを下唇と共に噛み締め、私は一つ息を吐いて門を潜った。


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