この恋は、絶対に秘密!
「夕飯は私が作りますからね」

「無理しなくていいよ。ただくれぐれも火事だけはおこさないように。あと戸締まりよろしく」

「わかってますよ!いってらっしゃいませ」



うやうやしく頭を下げると、岬さんは“調子が狂う”とでも言いたげな顔で「……いってきます」とぼそりと呟いた。

ぽりぽりと頭を掻きながら歩く後ろ姿に、込み上げる笑いを噛み殺す。


新婚夫婦のようなやり取りに惚けている場合じゃない。私も早く準備をしなくちゃ。



部屋に戻って簡単にいつものメイクを済ませると、半袖のブラウスとグレーのタイトスカートに着替えた。

会社でも私だって気付かれないように、きっちり地味子になりきるのよ瀬奈!


鏡の前でもう一度自分の姿を確認してから部屋を出て鍵を閉めると、それを大事にバッグの中に仕舞った。


< 164 / 387 >

この作品をシェア

pagetop